
『Mickey17』
<基本情報>
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ
製作:デデ・ガードナー、ジェレミー・クライナー、ポン・ジュノ、チェ・ドゥホ
原作:エドワード・アシュトン『ミッキー7』
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロ
<公開日>
韓国:2025年2月28日
アメリカ:2025年3月7日
日本:2025年3月28日
映画『パラサイト 半地下の家族(原題:기생충)』でアカデミー4冠を独占したポン・ジュノ監督の新作『ミッキー17』が2月28日、韓国で先行公開されました。
『ミッキー17』はポン・ジュノ監督の8番目長編映画で、この映画はエドワード・アシュトンの小説『ミッキー7』を原作とし、宇宙植民地開拓時代を舞台にしています。
韓国の文化体育観光部(日本の文科省に相当)の傘下行政機関であるKOBISによると、公開当日午前7時基準、『ミッキー17』の前売り率は68.5%、前売り観客数は31万9千人余りとなり、どれほど多くの人がこの映画を待っているかが分かります。
Mickey17のあらすじ

未来の宇宙植民時代、人類は新しい惑星を探査し、定住する任務を遂行しています。主人公の ミッキー(ロバート・パティンソン)は、植民地開拓チームの 「エクスペンダブル(Expendable、消耗品)」 として働く存在です。
「エクスペンダブル」とは、探査過程で最も危険な任務を担い、死亡すると新しい体に複製されて再び目覚める人間のことです。ミッキーは 死んでは生き返ることを繰り返す役割 を担っており、これまで何度も死を経験してきました。
しかしある日、ミッキー17が死亡したと判断され、新たにミッキー18が生成されます。ところがミッキー17が奇跡的に生き延びて戻ってきたことで、事態は混乱していきます。
システム上、2人のミッキーは共存できない ため、ミッキー17とミッキー18はそれぞれ自分の存在を守るために奮闘し、宇宙開拓に隠された巨大な陰謀と対峙することになります。この過程で、ミッキーは自分が単なる「エクスペンダブル」ではないことに気付き、人間のアイデンティティや存在の意味についての問いを投げかけることになります。
ベルリン映画祭で公開された『ミッキー17』の反応

『ミッキー17』は韓国に公開される前、2月15日ドイツで行われた「第75回ベルリン映画祭」で公開され、さまざまな反応を受けました。
映画レビューサイト「メタクリティック」によると、『ミッキー17』は評論家から100点満点中平均74点を獲得しました。15人の評論家のうち、10人が好意的な評価(75~100点)、5人が中立的な評価(40~74点)を下しました。
肯定的な評価としては、イギリスのメディア『インディペンデント』は100点 を付け、「あらゆる残酷さと愚かさの中で、ポン監督は重要な気づきを伝えている」と高く評価しました。また「ある男が、自分が幸せになってもいいのだと学ぶ物語だ」として、映画のメッセージ性を絶賛しました。
一方、BBCは「アカデミー賞受賞監督ポン・ジュノの混乱したSF作品」とし、やや期待外れと評しました。
『ミッキー17』の見どころは何?

『ミッキー17』は、単なるSF映画ではなく、人間の存在や社会構造に対する哲学的な問いを投げかける作品です。映画が伝えようとする核心的なメッセージは以下の通りです。
(1) 人間のアイデンティティと存在の意味
映画は主人公ミッキーを通じて自己の連続性に関する哲学的な疑問を提起します。ミッキーは死ぬたびに新しい身体で生まれ変わります。そのうちに観客は「本当のミッキーは誰なのか、ミッキーの存在にはどんな意味があるのか」など、人間のアイデンティティについて深く考えさせます。
(2) 資本主義社会における労働搾取への批判
ミッキーは本質的に「エクスペンダブル」として扱われ、何度も死んでも再生されるため、際限なく労働力として利用されます。これは 資本主義社会において、人間が機械のように消費される現実を風刺しています。
危険な労働を繰り返すミッキーの姿は、現代社会において「消耗品」として扱われる労働者の現実 を思い起こさせ、「人間は単なる資源ではない」というメッセージを通じて、人間の尊厳や労働の価値を再考させます。
(3) テクノロジーと倫理の衝突
映画は科学技術の進歩が、人間の尊厳を脅かす可能性があるという問題を提示します。クローン技術が人間を単なる「資源」として扱うようになったとき、生命の意味はどう変わるのかという悩みを通じて、テクノロジーの進化は必ずしも人類にとって良いものとは限らないと、警鐘を鳴らしています。
(4) システムに抗う個人の抵抗
ミッキーは最終的に、システムのルールに従わず、自分自身の存在を守るために戦います。これは抑圧的な構造に対抗し、自らの人生を切り開こうとする個人の抵抗を象徴しています。既存の秩序が押し付ける運命を拒み、自分の価値を見つけようとする過程こそが、映画の核心となっています。
このように映画『ミッキー17』は、ポン・ジュノ監督ならではの哲学的なメッセージとSF的な想像力が合わさった映画です。これにロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、トニ・コレット、マーク・ラファロなど、強力なキャストで構成された「ハリウッドと韓国映画の融合で生まれた新しいスタイルのSF映画」です。
上記の点を考えて作品を見ると、より一層の楽しさを感じることができるのではないでしょうか。ちなみに日本の公開は3月28日です!