2025年5月11日、tvNドラマ『いつか賢いレジデント生活(以下、スルジョンセン)』に、『賢い医師生活』の人気カップル「イクソンカップル(イ・イクジュン&チェ・ソンファ)」が特別出演し、大きな話題を呼びました。
その影響もあってか、視聴率は7.5%にわずかに上昇し、これまでの放送の中で“最高”の記録を更新しました。
久しぶりに「賢い医師生活」の「イクソン」カップル(イ・イクジュン❤チェ・ソンファ)観ちゃうよ〜
— haru (@HaruKane97412) 2025年5月11日
4年ぶりだよ、イクソンカップル!!😭😭#チョジョンソク #チョンミド #いつかは賢いレジデント生活 pic.twitter.com/gj5z2lSYmO
『スルジョンセン』は『賢い医師生活』シリーズのスピンオフドラマで、2025年4月から放送がスタートしました。全12話構成で、現時点では第10話まで公開されており、残すところあと2話となっています。
『いつか賢いレジデント生活』基本情報

視聴率だけで見ると、他の地上波の青春ドラマと比べて良い成績だと言えます。



2025年5月11日現在、KBS2のドラマ『24時ヘルスクラブ』は1.7%、MBCの『バニーとお兄さんたち』およびSBSの『四季の春』はそれぞれ0.7%となっています。しかし『賢い医師生活』シリーズの名声を振り返ると、やや物足りない数字でもあります。
『賢い医師生活』シーズン1は最高視聴率16.3%を記録し、シーズン2も15.1%という高い数値を叩き出しました。
つまり、前作の人気にもかかわらず、『スルジョンセン』の視聴率は半分にまで落ち込んでしまったのです。
専攻医のストライキ、そして『スルジョンセン』

では、なぜ『スルジョンセン』は苦戦を強いられているのでしょうか?
このドラマは放送前からすでに物議を醸していた作品です。
もともとは2024年5月に放送される予定でしたが、2024年上半期から始まり、現在も続いている「専攻医ストライキ」の影響で、やむを得ず放送中止および無期限延期となりました。
なぜなら、専攻医たちの物語を中心に描かれる『スルジョンセン』は、現実との乖離によって視聴者の反感を買う恐れがあったからです。
一部には「ドラマはドラマ」として現実とは切り離して見るべきだという意見もあります。
しかし、多くの視聴者にとって「ドラマ」であることは理解しつつも、現在自分たちに大きな被害を与えている専攻医たちを「美化」することになるのではという懸念の方が大きかったようです。
死亡者まで続出した専攻医ストライキ
専攻医を含む医師たちが集団行動に出た理由は、政府が2024年2月に2000人規模の医学部定員増加および必須医療強化パッケージ政策を発表したことへの不満からでした。
現在の韓国の医療業界には多くの問題が存在し、医師の増員やシステムの改善が必要だという点については多くの国民も同意していました。
しかし、政府の一方的な政策推進には懸念の声も大きかったのです。
そのような中で医師たちがストライキを宣言し、専攻医たちまでもが一斉に辞職する事態に発展すると、韓国の医療システムは完全に崩壊してしまいました。
特に「救急室パニック」と言われるほど救急医療体制が急速に悪化し、死亡者が続出するようになったのです。以下はいくつかの事例です。
2024年3月、用水路に落ちた生後33か月の赤ちゃんが救急搬送を拒否され、死亡
有名政治家キム・ジョンイン氏が転倒し救急車で搬送されるも、救急室不足により22か所もたらい回しされた末にようやく治療を受けられた
国会議員キム・ハンギュ氏の父親が救急室に搬送されるも、医師不足で治療を受けられず死亡
朝鮮大学病院から100m離れた場所で倒れていた心停止状態の女子大学生が病院に運ばれるも、医師がいないという理由で死亡
2024年9月、60代の男性がコンクリートに押し潰されて救急搬送されるも、受け入れを拒否され死亡
2024年11月15日、モヤモヤ病を患っていた16歳の男子高校生が脳出血で倒れ救急搬送されたが、救急室が見つからず、6時間後にようやく手術を受けたが結局死亡
診療科の担当医師がいないために「患者を受け入れられない」と告知した救急医療機関は、1年前と比べて最大40%も増加
この他にも多数の死亡事故や、救急室を探し回った末にようやく治療を受けられたという事件が連日報道されました。
これらの事故は、専攻医たちが一斉に辞職し、医療現場に空白が生じたことで起こったものでした。
その結果、当初は医師たちを支持していた国民も背を向けるようになり、「憎しみ」に近い感情を抱くようになりました。
そしてこのような感情はドラマにまで波及し、『スルジョンセン=専攻医美化ドラマ』というイメージが定着してしまったのです。
単に「専攻医」のイメージだけのせい?『スルジョンセン』論争の理由

しかし、単に専攻医に対する否定的なイメージのせいで『スルジョンセン』が苦戦していると断言することはできません。
ファンの主張の通り、ドラマはドラマ、現実は現実だからです。
ドラマを単なる“ファンタジー”として捉えるのであれば、強い拒否感はないはずだ、というのが彼らの論理です。

その一例が、2025年上半期に大ヒットしたドラマ『トラウマコード』だと言えるでしょう。
この『トラウマコード』の人気によって、『スルジョンセン』も1年越しに視聴者の前に戻ってくることができたのです。
しかし大衆の反応を見ると、『トラウマコード』は選んだものの、『スルジョンセン』を選ぶことには少し慎重になっている様子がうかがえます。
(1)現実とのギャップ

『トラウマコード』は“ファンタジー”に近いドラマであり、その設定もまた現実離れしたものでした。
一方、『スルジョンセン』は現実を反映した若者たちの成長ストーリーとして描かれています。
主人公のオ・イヨンは、患者に向けた温かいまなざしと人間的な苦悩を同時に抱えて生きる人物です。
しかし、実際の医療現場での専攻医たちは、過酷な長時間労働、交代のない夜勤、手術室での補助業務などに追われ、“労働者”という印象が強くあります。
そのため一部の視聴者からは、「現実の専攻医たちは、自分たちの待遇改善のために街頭で戦っているのに、ドラマはあまりに理想化されすぎている」といった批判の声も上がっています。
(2)監督および脚本家の交代による変化
『スルジョンセン』では、これまでシリーズを手がけてきたシン・ウォンホPDとイ・ウジョン作家が今回は“クリエイター”としてのみ参加し、演出はイ・ミンスPD、脚本はキム・ソンヒ作家が担当しています。
そのためか、第1話から『賢い医師生活』の雰囲気を期待していた一部のファンからは不満の声が上がりました。


『賢い医師生活』は、患者たちの物語や医師たちの葛藤、感動を繊細に描きつつも、決して重苦しくならず、笑いを交えた絶妙なバランスが魅力でした。
しかし『スルジョンセン』は、ユーモアよりもキャラクターの成長ストーリーに比重を置いており、時に不自然な展開や“現実を描いた”とされる中で登場する“ファンタジー的キャラクター”が、視聴者の没入感を削いでいるという指摘もあります。
(3)キャラクター設定の甘さ
コ・ユンジョンのメイクに関しても批判の的となっています。
彼女が演じるオ・イヨンは、両親の事業の失敗により“金のスプーン”から一転、“借金まみれ”になったキャラクターです。
病院に戻ってきたのも、借金返済のためという設定ですが、視聴者が目にしたオ・イヨンは、完璧なフルメイクを施した清楚な姿でした。
現実の専攻医たちは過重労働のため、化粧をする時間もなく、疲れた表情が当たり前。
そのため、主人公の洗練されたビジュアルやメイクは現実とかけ離れているという声が一部ユーザーの間で上がっています。

また、オム・ジェイルのキャラクター設定にも疑問の声があります。
オム・ジェイルはアイドルとしてデビューした後、遅れて医学部に進学したという設定なので、視聴者の間では自然と「頭が良い」や「天才」というイメージが形成されがちです。
しかしドラマ内での描かれ方はどこかぼんやりしており、普通の人のように見えるということで、「キャラクター設定に穴がある」との指摘もあります。
このように、『スルジョンセン』はキャラクターの設定やストーリーが、前作と比べて弱すぎるとの批判が噴出しています。
(4)物語の中心がないドラマ
率直に言って、コ・ユンジョンの演技に対して文句を言う人はいないでしょう。
ドラマ『スイートホーム』や『ムービング』などで見せた彼女の演技は間違いなく素晴らしいものでした。
しかし、『スルジョンセン』においては、彼女の演技力すら批判の対象となっています。
それは彼女に限らず、他の俳優たちの演技力にも疑問の声が上がっているのです。なぜでしょうか?
その原因は、彼らが演じるキャラクターに“重み”がないからだと分析されています。

『賢い医師生活』では、感情的なストーリーはユ・ヨンソクとシン・ヒョンビン、医師としての主軸はチョ・ジョンソク、コメディパートはキム・デミョンとアン・ウンジンが担っていました。
それぞれのキャラクターがしっかりと役割を果たしていたため、視聴者は“これはファンタジーだ”と理解しながらも共感し、応援することができました。
しかし『スルジョンセン』では、すべてのキャラクターの役割が曖昧で、その役割が機能していないため、俳優の演技力だけでは補えないというのが一部ユーザーの見解です。
それが結果的に「俳優の演技が下手」といった批判へとつながってしまっているのです。
いよいよ『スルジョンセン』は残すところあと2話となりました。多くの議論や物議を醸してきたにもかかわらず、視聴率は少しずつ上昇傾向にあることから、楽しんで視聴している人も多いという証でしょう。
個人的には、もう少し丁寧に作り込んで「賢い医師生活」の名声を受け継いでほしかったという惜しさもあります。
最近ではロマンスが最高潮に達し、視聴者の心を掴んでいるだけに、最終回もポジティブな形で締めくくられることを願っています。