
おすすめ:★★★☆ (星5つ中)
※ 少しネタバレがあります。ドラマをご覧になった方、または内容を知っていても構わない方のみ、お読みください。
Netflixで公開後、世界中で大きな人気を博したドラマ『弱いヒーロー Class1』。もともとNetflixで公開される2年前にWavveで先行公開されていましたが、当時も大きな反響を呼び、人気を集めました。
そして『Class2』への関心が高まり、特に原作ファンの間では大きな関心事となっていました。『Class1』が原作のスピンオフだったのに対し、『Class2』では原作で絶大な人気を誇ったキャラクターたちが大勢登場するためです。

しかし、公開後は評価が分かれるドラマとなってしまいました。批判的な意見は主に原作ファンからで、好意的な意見は主に原作を読んでいないファンからでした。
このような反応を見て、興味深いと思いました。そこで今回は、原作を読んだ者と読んでいない者、それぞれの立場から感想を書いてみようと思います。ちなみに、原作を読んだのは筆者(私)で、読んでいないのは夫です。
基本情報
主な登場人物
(1) ヨン・シウン(演:パク・ジフン)

前作に続き、ヨン・シウンは冷静沈着な頭脳派の高校生として登場します。体力的には弱いものの、卓越した知略と観察力を駆使して、周囲の暴力や不正に立ち向かいます。今作では、前作での出来事によるトラウマを抱えつつも、新たな環境で再び困難に直面しながら成長していく姿が描かれます。
(2) パク・フミン(演:リョウン)

パク・フミンは、ヨン・シウンが転校した学校のリーダー的存在であり、通称「バク」と呼ばれています。彼は、外見は強面ながらも、仲間思いで義理堅い性格の持ち主です。シウンとの出会いを通じて、彼自身も成長し、友情や信頼の大切さを学んでいきます。
(3) コ・ヒョンタク(演:イ・ミンジェ)

コ・ヒョンタクは、元テコンドー選手であり、学校内でも屈指の実力者として知られています。彼は、強い正義感と仲間への思いやりを持ち合わせており、シウンやフミンと共に困難に立ち向かいます。
(4) ソ・ジュンテ(演:チェ・ミニョン)

ソ・ジュンテは、学校内で目立たない存在であり、いわゆる「パシリ」として扱われています。彼は、自分の立場に不満を抱きつつも、なかなか行動に移せない内向的な性格です。しかし、シウンやフミンとの交流を通じて、自分自身を見つめ直し、少しずつ変化していきます。
(5) ナ・ベクジン(演:ペ・ナラ)

ナ・ベクジンは、学校内の不良グループ「連合」の頭脳として知られています。彼は、冷静かつ計算高い性格で、常に一歩先を見据えて行動します。その一方で、過去の出来事や人間関係により、内面には複雑な感情を抱えています。
(6)クム・ソンジェ(演:イ・ジュニョン)

クム・ソンジェは、戦いに快感を覚える異色のキャラクターであり、「アドレナリンの奴隷」とも称されています。彼は、予測不能な行動や言動で周囲を翻弄しつつも、どこか孤独を感じさせる存在です。
(7) チェ・ヒョマン(演:ユ・スビン)

強い者には弱く、弱い者には強い典型的な不良です。ソ・ジュンテと一緒に弱い子をいじめ、学生たちの携帯電話を盗ませて連合に入りたいと考えています。ヨン・シウンやパク・フミンを嫌っていますが、自分より強いことを知っているため、直接戦うことはできず、口だけ達者な人物
あらすじ
友人を守るために暴力に立ち向かったものの、結果的に友人を失ってしまったヨン・シウンは、トラウマを抱えながら問題の多い学校「ウンジャン高校」へ転校する。新たな環境でも暴力が蔓延しており、シウンは再び暴力に巻き込まれることを避けようとするが、周囲の状況がそれを許さない。新たな友情が芽生える中で、過去のトラウマを少しずつ克服していくシウン。再び友人を失うことはできないと決意し、より大きな暴力に立ち向かう、壮絶なサバイバルと輝かしい成長の物語が描かれる。
『弱いヒーローClass2』 海外・韓国評価指標
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韓国をはじめ、日本、メキシコ、インドで1位を記録。
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4月26日基準で、32カ国で2位にランクイン。
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4月21日〜27日、Netflix非英語圏シリーズ週間ランキング1位、全体ランキング3位
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IMDB評価: ★8.4/10
原作を読んだ者の感想
(1)原作より大幅に弱体化された主人公

まず原作について説明します。小柄でか弱く見える高校生「ヨン・シウン」は、自身の身体的な弱点を補うために周囲の物を応用して戦う知略型ファイターです。ウェブ漫画の説明にもこう書かれています。
「卑怯だって…?最初から同じ土俵じゃないだろ?体格も数も合わないんだよ、この野郎共が!」
生まれつき弱い少年が、相手より数手先を読む心理戦、地形と道具を活かして相手を徹底的に叩きのめすファイターへと成長する。
今や彼の別名は“銀章白蛇(ウンジャンペクサ)”だ。
ヨン・シウンが人気なのは、体力的には弱いにもかかわらず、知能を駆使して自分より強い相手を打ち負かしていく“無敵キャラ”だからです。原作でもかなり殴られますが、その何倍も返してくれるので「スカッと」します。
しかしドラマのシウンは「成長ストーリー」に重点を置いているせいか、そうしたスカッと要素が完全に排除され、「感動」路線に変わってしまいました。無敵キャラなら感動できないのか?と疑問に思いました。

また、Class1ではヨン・シウンが物語の中心でしたが、Class2では存在感がかなり薄くなってしまいました。
原作でもシウンはアン・スホを恋しがりますが、その過去を乗り越えるために自分を叱咤激励する姿が描かれます。
しかしドラマではあまりにも無力で、武器も「ボールペン」一本だけ。原作のように鉢植えやカーテン、机、教科書の角など、もっと多様な道具を使って戦ってほしかったのに、ボールペンだけにこだわる姿が物足りなく感じました 。
エンディングでは原作のように戦略を立てる姿は見せるものの、その過程がもどかしかったです。
(2)原作の“設定”だけを借りたオリジナルドラマ
ドラマは、原作をもとにした「もう一つのオリジナル作品」と考えています。
なぜなら、パク・フミン、クム・ソンジェ、ナ・ベクジンを見比べると明らかだからです。

パク・フミンは、ドラマでも原作でも喧嘩の実力は一級ですが、性格はサバサバしていて、戦うのが嫌いで、食べるのが好き、そして友達に人気のあるキャラです。
でもドラマに登場する「チキン屋の父親」は原作には登場しません。このエピソードは他のクラスメイトの話で、「未成年に酒を売った」という事件は共通していますが、パク・フミンとナ・ベクジンが直接関係することはありません。
しかしドラマではその事件をきっかけにフミンがベクジンの影響下に入る展開に。原作では二人は友人ではないのに、ドラマでは友達として描かれています。
これはたぶん、パク・フミンのバックストーリーと、ナ・ベクジンがフミンに執着する「理由」を作るため、原作のエピソードを組み合わせたのだと思います。
だからこそ、フミンが弱々しく描かれたのは、原作ファンとしては納得いきません。原作のフミンは、コ・ヒョンタクのこととなれば迷わず突っ走る義理堅いキャラですが、自分の弱点に屈しない人物です。

最後に、私が一番好きなクム・ソンジェ。ドラマでも最も魅力的でした!
原作のクム・ソンジェは、いわゆる“ぶっ飛んだキャラ”です。ドラマでも純粋に喧嘩が好きな狂人として描かれていますが、原作ではそれ以上の“変人”です。作中最強とされるナ・ベクジンですら彼を制御できないほど、思いのままに行動するキャラです。
そして最終的にはパク・フミンたちを助ける意外なキャラクターでもあり、ヨン・シウンに次ぐ人気キャラです。
ただ、ドラマではソンジェの狂気っぷりが十分に描かれなかったのが少し残念。特にナ・ベクジンの部下のように描かれていたのは不満です。
でも、ドラマ版のソンジェが好きな理由は、原作とは違う魅力があったからです。原作ではサイコパスのような狂人でしたが、ドラマでは少し孤独に見える狂人でした。
特にヨン・シウンとの屋上での戦闘シーンは、原作に匹敵するほど緊張感があり、夢中で観ました。思わずソンジェを応援してしまうほど格好よくて、このシーンは本当に大好きです。
(3)浅すぎるストーリーへの物足りなさ
Class1は原作ファンの間でも評価が高かったです。なぜならヨン・シウンとアン・スホ、この二人の男性間の熱い友情が強く描かれ、敵キャラのオ・ボムソクも現実にいそうな悪役だったからです。スピンオフという点もありましたが、
全てのキャラクター描写が視聴者に受け入れられ、ストーリーも深みがあり、原作と異なる展開でも好意的に受け入れられていました。

しかしClass2は、Class1に比べてストーリーの深さが不足していた点が、原作ファンから最も批判された部分です。
- なぜコ・ヒョンタクはパク・フミンのことになると怒りを抑えられないのか?
- ナ・ベクジンはなぜそこまでフミンに執着するのか?
- クム・ソンジェはなぜヨン・シウンたちを助けたのか?
そういった部分が深く掘り下げられておらず、話が進んでも視聴者が納得できませんでした。
おそらく話数が限られていたため仕方なかったのかもしれませんが、それならば原作の全てを詰め込むよりも、Class1のように1~2エピソードに絞って、キャラクター同士の関係性をしっかり描いて欲しかったというのが正直な感想です。
原作を読んでいない視聴者の感想
(1)爽快なアクションシーン

不良たちと戦う学園アクションドラマらしく、今作でも華やかなアクションシーンが視聴者の目を引きつけました。
私の夫がこのドラマを高く評価している一番の理由も、まさにこのアクションです。
スピーディーかつ力強い戦闘シーンは、緊張感を与えるだけでなく、見ていてスカッとする爽快感も感じさせてくれました。
(2)『Class1』よりも大衆性を重視したドラマ
『Class2』の公開前、ファンたちの間では「今度はまたヨン・シウンにどれほど重い荷物を背負わせるのか」といった関心が集まっていました。
ですが、『Class2』は『Class1』ほど重いトーンではありません。監督のインタビューでも語られていたように、「大衆性」を意識し、ヨン・シウンが背負っていた重荷をパク・フミンら仲間たちに分け与えることで、視聴者も気軽に見られる内容になっていました。
(3)現実とファンタジーのギャップを埋めた作品
実は原作は「ファンタジー」に近い物語です。
ナ・ベクジンがリーダーを務める「連合」という組織は、ソウルの一地域に根を張る、違法・暴力・腐敗の温床のような存在。
そのトップが高校生であるにもかかわらず、大人たちが彼にひれ伏し、まるでヤクザのような抗争を繰り広げ、殺し合いや悪行までも行う集団なのです。

これは高校生が関われる範囲を明らかに超えており、原作ファンだけでなく大衆にアピールするためには、こうした「連合」の力を弱体化する必要があったのではないかと思います。
そのため、ドラマ版ではナ・ベクジンが普通に高校へ通い、制服を着て、事業といってもバイクやスマートフォンを盗んで違法に販売するような、小規模かつ現実的な犯罪に設定されたのでしょう。
こうした変更によって、「ありえそうな話」として、視聴者が感じる乖離感も軽減されたと思います。
『Class1』に比べて好みが分かれた『Class2』ですが、確かなのは配信プラットフォームがWavveからNetflixに移ったことで、海外でも話題性が一気に高まったという点です。
そのため、シーズン3が制作される可能性は非常に高くなったと思います。
エンディングでは新たな組織「チョンガン」の名前が登場し、もしシーズン3が作られるなら、ヨン・シウン一行と「チョンガン」との対決が描かれることになるでしょう。
「天剛」も原作に登場する組織名ではありますが、原作では中盤のエピソードに過ぎず、ドラマはすでに原作の完結内容を反映しているため、
おそらくシーズン3は完全オリジナルの物語になるのではないかと予想しています。
原作ファンにとっては少し物足りなさも残る『弱いヒーロー Class2』ですが、ドラマならではの新しい解釈やキャラクター同士の化学反応もまた一つの見どころでした。
果たしてSeason3ではどんな展開が待っているのか、そしてシウンたちの物語がどこへ向かうのか——引き続き注目していきたいと思います!