
おすすめ度: ★★★☆ (★5つ中)
※ 少しばかりネタバレが含まれています。ドラマをすでに視聴された方、または内容を事前に知っていても大丈夫な方のみお読みくださいね!
2025年上半期、最も期待していたドラマのひとつ、JTBC『君は天国でも美しい』は、一生を共にする相手を選べる天国、カルマや輪廻転生という斬新な設定で物語が始まります。
予想外の組み合わせ、キム・へジャとソン・ソックの演技はユーモアたっぷりで視聴者を引き込みます。

現世でのたくましい姿と天国でのとまどう姿を行き来するシーンは、笑いと涙を同時に届けつつ、人生や人間の本質、選択と結果の重みを自然に考えさせてくれます。
このドラマを完走してからかなり時間が経ちましたが、今日ついに『君は天国でも美しい』について語ろうと思います。
『君は天国でも美しい』基本情報

| 📺 原題 | 천국보다 아름다운 |
|---|---|
| 🌎 英題 | Heavenly Ever After |
| 🎬 ジャンル | ヒューマン / ファミリー / ブラックコメディ / ロマンス / ファンタジー / ミステリー |
| 🏢 放送局 | JTBC |
| 💻 OTT | Netflix |
| 📅 公開日 | 2025年4月19日 |
| 📺 話数 | 全16話 |
| 🎥 制作 | JTBCスタジオ |
| 🎬 演出 | キム・ソギュン |
| ✍️ 脚本 | イ・ナムギュ / キム・スジン |
| 🌟 出演 | キム・へジャ / ソン・ソック / ハン・ジミン / イ・ジョンウン / チョン・ホジン / リュ・ドクファン / シン・ミンジェ / キム・チュンギル / ユ・ヒョンス ほか |
あらすじ

ヘスクは80歳で死を迎え、地獄に行くと思われていたが、意外にも天国へ向かうことになる。そこで彼女は、天国でどんな姿で、誰と一緒に過ごすかを選ぶ特別な状況に置かれる。
迷った末、夫が生前「今の姿が一番美しい」と言った言葉を思い出し、他の人とは違い80歳のままの姿を選び、夫のいる場所へ向かう。
しかし夫は20代後半の姿で天国生活を楽しんでおり、80歳のヘスクを見て驚くが、すぐに受け入れ、幸せな天国生活を共に期待する。
しかしある日、見知らぬ女性が二人を訪ねてくる。記憶喪失だった彼女は「コ・ナクジュン」という名前の3文字だけを覚えていた…
登場人物
(1) イ・ヘスク(キム・へジャ)

1945年生。本作の主人公。イ・ヨンエの事実上の教母であり、師匠、養母でもある。借金取り業を生業としており、好きでやっている仕事ではなく生活のために選んだ職業。これにより対外的評価は良くない。
長年の事故で動けなくなった夫に尽くす忠実な妻。現世での行動から地獄に行くと思われたが、意外にも天国に行き、トラブルメーカーとなる。
(2) コ・ナクジュン(ソン・ソック)

1940年生でヘスクの夫。若くして不幸な事故に遭い、平生は寝たきり。天国で80歳の姿で来たヘスクを見て驚くが、すぐに受け入れ、彼女を心から愛する。現在は天国と地上を行き来し、郵便配達の仕事をしている。
(3) ソムイ(ハン・ジミン)

天国でヘスクが出会った正体不明の女性。元々は地獄行きだったが、ナクジュンの助けで天国に来る。ナクジュンの家で待ち、ヘスクの前で彼を抱きしめる。ナクジュンから「ソム」という名前をもらう。既婚者であるナクジュンと度々絡むため、ヘスクの怒りを買う。
(4) イ・ヨンエ(イ・ジョンウン)

ヘスクの事実上の養女。1979年生。幼少期に暴力的な父と二人暮らしだったが、ヘスクが借金を肩代わりし、養女として迎える。ヘスクと共に働きながら、借金者への叱責や脅しを担当。ヘスクに深い敬意と感謝を持ち、「社長」と呼び従う。若くして天国へ来て、ヘスクと再会する。
(5) センター長(チョン・ホジン)

天国を管轄する人物。誰にでも寛容だが、特にヘスクには「ヘスク様」と呼ぶほど特別に配慮する。すべてを知っているが表に出さず、人々の心に響く存在。
(6) ヨムラ(チョン・ホジン)
地獄の長で、天国支援センター長の双子の弟。寛容な兄と違い、冷酷で情け容赦ない性格。兄弟関係は良くないが、原理原則に忠実。やや軽薄な一面もある。
(7)牧師(リュ・ドクファン)

幼少期に迷子となり、5歳で亡くなる。死後も教会前で親の言葉通りに待ち続け、やがて牧師になる。熱心だがやや短気で、ヘスクとの口論では常に負けるが、心の片隅で尊敬の念を抱く。
評価・反応

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Netflixグローバル非英語圏ランキング5位
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初回視聴率5.8%、最終話8%
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視聴者反応は賛否両論。第2話までは斬新な設定と美しい映像で好評、他作品より高視聴率を記録
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物語進行に伴い、唐突な展開や一部キャラクター(ソムイや犬たち)の設定が集中を妨げるとの意見も
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海外では特に反応良好。台湾の《Marie Claire》では「キム・ヘジャの引退作かもしれないので必見」と推奨
個人的感想
(1) 斬新な設定と惜しい展開

このドラマの最大の魅力は、新鮮な設定から始まります。キム・ヘジャさんとソン・ソックさんという意外な組み合わせで、どのような物語が展開されるのか全く予想できませんでした。
しかし「天国では、生涯一緒に過ごす年齢と相手を自分で選べる」という独創的な世界観が登場し、一気に引き込まれました。
特にヘスク役を演じたキム・ヘジャさんは、突飛で愛嬌のある演技を自然にこなし、作品全体の雰囲気を軽やかにしています。年配の俳優の中で、ここまで可愛らしい魅力を持つ方はそう多くないでしょう。

しかし、物語が後半に進むにつれ、惜しい点も目立ちます。それは「カルマ(業)」という設定です。制作側が伝えたかったのは因果応報のメッセージかもしれませんが、展開上は「現世の被害者は前世の加害者であるため、現在の苦しみは当然」という印象に映る場面も多く見受けられました。
これは加害者に免罪符を与えるような印象を与え、作品が持つ力が一瞬で弱まった感があります。その結果、興味深く始まったドラマが視聴者に残す余韻は、やや複雑で切ないものとなりました。
(2) キム・ヘジャの新たな演技

このドラマを最後まで視聴できた最大の理由は、間違いなく韓国女優の代表格であるキム・ヘジャさんの演技です。この点については、誰も反論できないでしょう。
特に牧師役のリュ・ドクファンさんとの掛け合いのシーンは圧巻でした。ヘスク特有の静かでありながらもさりげなく小生意気な台詞や表情は、見ている人に「私が牧師でも一発叩きたくなる」と思わせるほどリアルで、同時にユーモアも感じられました。
また、現世での逞しい生き様と天国で戸惑う姿を完全に使い分ける幅広い演技は、長年「国民的俳優」と呼ばれる理由を改めて納得させられます。

さらに、約40歳差のソン・ソックさんとのロマンスは予想外の美しさで迫ってきました。年齢差による違和感が生じるのではと心配しましたが、画面で二人が向かい合うと自然で説得力があり、「あ、これありだ」と感嘆せずにはいられませんでした。

初登場から見事なリアクションで視聴者を笑わせ、ドラマ全編で本当の夫婦のようにやり取りする姿は、円満なカップルの魅力を存分に見せてくれました。結局、作品の奇抜な設定が輝くことができたのも、キム・ヘジャさんの存在感あってこそでした。
(3) 地獄行きの列車に対する独自の解釈

このドラマの最大の魅力は、何と言っても「新鮮さ」です。その新鮮さを最も象徴するのが、地獄行きの列車の演出です。数ある名シーンの中でも、この場面は恐怖と緊張感を同時に引き起こし、視聴者に強烈な印象を残します。
従来の作品では地獄行きや天国行きが別々の交通手段で描かれることが多かったですが、このドラマでは全ての魂が一つの列車に乗ります。
列車は天国駅と地獄駅に順に停車し、その過程で誰が地獄に行き、誰が天国に行くのかが明らかになります。地獄駅に到着すると、静かに座っていた人々の中で地獄に行く魂だけが無理やり引き込まれ、天国に行く人々は体を動かすことすらできません。
地獄に引き込まれる者たちが必死に抵抗しても、現世で犯した罪は最終的に償わなければならないというメッセージが強烈に伝わります。
つまり、この列車は単なる交通手段ではなく、審判の過程であり、未来の不確実性を象徴しています。

これは、私たちが日々の生活でどの選択がどの結果につながるか分からず生きている中で、最後の瞬間に初めてその結果が明らかになる人間存在の本質を凝縮しているかのようです。
そのため、このシーンは単なる奇抜な想像力の産物ではなく、人生と死、そして結果の重みを深く考えさせる意味深い装置となっています。
一度は見る価値のあるドラマ

『君は天国より美しい』は、独創的な設定と圧倒的なキャストの演技で視聴者を引き込みます。特にキム・ヘジャさんの多彩な演技は作品の魅力を格段に高め、ソン・ソックさんとの年齢差ロマンスも意外な美しさを見せてくれました。
物語には一部惜しい点もありますが、地獄行き列車など新鮮な演出は印象的です。
人間の選択と結果、人生の儚さを考えさせられる作品で、最後まで見る価値のあるドラマと言えるでしょう。