<3行要約>
- 放送開始当初は人気のなかったドラマが話題性1位に
- 同期間内のドラマのうち、デジタルデータ量で圧倒的1位を獲得
- MZ世代を中心に一つのトレンドとして定着
最近、韓国のSNS・ブログなどで＜ソンチンジャ(선친자)＞という言葉がたまに目につきます。初めて聞く言葉で調べてみると、最近話題のドラマが登場しました。
視聴率は5%ですが、話題性1位でとてもホットなドラマ「ソンジェ背負って走れ」です。＜ソンチャンジャ＞はドラマ「ソンジェ背負って走れ」に夢中な人たちのことを略した言葉です。
- 放送日 : 2024年4月8日～5月29日(総16話)
- 放送メディア : tvN
- 放送時間 : 月、火曜日 20:50
- 出演者 : ピョン・ウソク、キム・ヘユン、ソン・ガンヒ、イ・スンヒョプ、チョン・ヨンジュなど
- 原作：「明日の一番：ソンジェ背負って走れ(作家キム・パン、カカオウェブ小説)
- あらすじ：もし、あなたの推しを救うチャンスがあげられるなら？生きる意志を失った瞬間、自分を生かしてくれた有名アーティスト「リュウ・ソンジェ」。彼の死に絶望したファン「イム・ソル」は、彼を救うため時間を遡って2008年に戻る！再び生き返った19歳、目標は推しのリュ・ソンジェを守ること！
<出典：tvN「ソンジェ背負って走れ」公式サイト>
注目されなかったドラマ
ドラマ「ソンジェ背負って走れ」(以下「ソンジェ～」)は人気ウェブ小説を原作としたドラマで、5月29日(火)に終わりました。視聴率は5.8％で最後回としてはそんなに高くないですね。
このドラマは自分の推しを救うため熱狂的なファンの主人公が過去に戻って繰り広げられるタイムスリップ・ロマンスドラマです。最近の韓国ドラマでよく見られる題材ですよね。
だからでしょうか。最初に放送された時は視聴率3%で注目されませんでした。その理由としては、前作である「ウェディング・インポッシブル」の失敗(最終回視聴率3%)と非人気俳優のグラインナップがあります。それによくあるタイムスリップ・ロマンスドラマということで、注目される要素が弱かったです。
そのため、このドラマもただの恋愛ドラマの一つに成り下がるところでした。
MZ世代で最もホットなドラマに登り詰める
ところが、ドラマ放送2週目に入ると雰囲気が変わり始めます。SNSやファンダムサイトでドラマの画像や俳優の写真が増えてきて今では話題性1位になる、大ヒットをしました。
ドラマ3～4話が放送された直後12時間の間にSNS関連記事、YouTubeのコメント数、NaverTalkなどでドラマ関連コンテンツが前週より約160%上昇！また、デジタルデータ量は週末ドラマ(土日放送)より多い228%を記録。ちなみに普通平日ドラマは週末ドラマよりデジタルデータ量が少ないと言われます。
Kコンテンツオンライン競争力分析機関であるグッドデータコーポレーション(https://www.fundex.co.kr/fxmain.do)が発表した、4月2週目のTV-OTTドラマの話題性調査結果、話題性スコアは4万2,393点で、最近1年間放送されたTVドラマの中で最も高い話題性数値を記録しました。
放送2週目以降、このような記事が続々と出てきます。記事量が多くなったということは、それだけ話題性があるということですね。
それでは、どのくらい人気があったのか、数字で見てみましょう。
- 2049男女視聴率、6週連続全チャンネル1位を獲得
- 今年放送された全チャンネル平日ドラマ基準、女性20代最高視聴率記録
- グッドデータコーポレーション5月3週目のTV-OTTドラマ話題性調査結果、58.37%で3週連続1位。
- TV-OTT出演者総合話題性 1位 ピョン・ウソク、2位 キム・ヘユン
- 放送5週目の平均話題性スコアは、6万8,248点(放送2週目4万2,393点)で歴代9位を記録。
- 累計視聴回数、5億7000万ビュー(1～10話基準)を記録。
- OTTストリーミングであるTVINGの同時間帯ライブチャンネルのうち、リアルタイム視聴シェア94%突破
- 東南アジア、中東にサービスを提供する香港発OTTビュー(VIu)の5月1週目(4月29日～5月5日)チャートを見ると、インドネシア、シンガポール、マレーシアで1位にランクイン。
ドラマが後半になるにつれ、ますます上昇気流に乗っているようですね。
「ソンジェ～」が大ヒットになった理由
現在、「ソンジェ～」はものすごい話題性でシンドロームを巻き起こしています。しかし、視聴率はわずか約5%です。何か違和感がありませんか？視聴率は低いのにコミュニティ、SNSでは大騒ぎです。一体なぜなのでしょうか？
① MZ世代に人気
まず、上記の数値はMZ世代を対象に調査した数値です。 tvNも20代から49歳までの若い層をターゲットにしています。「ソンジェ～」はMZ世代にホットなドラマです。
しかし、MZ世代はテレビを見ません。彼らはSNS、YouTube、OTTを主に使います。そのため、テレビ視聴率は低くなるのは当然のことです。
このような現象は、最近大好評だったドラマ「涙の女王」と比較しても分かります。ドラマ「涙の女王」は、tvNで2024年3月9日～4月28日まで放送された週末ドラマです。人気俳優キム・スヒョン、キム・ジウォン主演のこのドラマは最終回視聴率24%を記録するほど人気でした。
現在、ドラマが終わったにもかかわらず、8週間の平均話題性スコアが71,412点で、歴代5位(出典：グッドデータコーポレーション)にランクインしており、「ソンジェ～」よりも上位です。
ところで面白いのは、「涙の女王」は動画クリップ部門で1位を獲得しているのに対し、「ソンジェ～」はユーザーの書き込みとコメントを調査したVON(Voice of Netizen)部門で強さを見せていることです。
つまり、「ソンジェ～」の人気は流行をリードしているMZ世代に集中していると言えます。
② 俳優「ピョン・ウソク」のスター性
ヒョンビン、コン・ユ、ソ・ジソプなど、現在韓流ドラマを有名にしてくれた40代以上の大スター俳優は多いですが、次世代男性俳優がいないのが韓国ドラマの問題点でした。しかし、このドラマを通じて韓流ドラマの後を継ぐ一つの宝石が誕生しました。
男主人公「ソンジェ」を演じた俳優ピョン・ウソク(변우석)です。
ピョン・ウソクはtvN「青春記録」(2020)、Netflix映画「20世紀少女」(2022)、JTBC「力の強い女 カン・ナムスン 」(2023)など、様々なドラマや映画に出演し、フィルモグラフィーを積み重ねてきました。
190cmに達する大きな身長とハンサムなルックスで目立つ俳優ですが、彼を大スターにしてくれる作品がないため、ただの俳優として認識されてきました。
しかし、この作品で一気に注目され、韓流ドラマの次世代俳優として注目されています。その人気がどの程度かというと、彼はドラマの中でバンドECLIPSE(エクリプス)のボーカルですが、彼が歌ったOST＜소나기(にわか雨/ソナギ)＞が5月16日メロンTOP100で8位を獲得しました。それだけではなくドラマの熱狂的なファンは ECLIPSEのコンサートまで要求しています。
彼がこのドラマで人気を得た理由は簡単です。原作小説のキャラクターとのシンクロ率が完璧であること、かけがえのない演技力、そしてハンサムなルックス(笑)。
彼のスター性はドラマのシンドロームに欠かせない要素です。
③ MZ世代の共感を得た時代背景
これまでタイムスリップといえば、「応答せよシリーズ」のように1980～90年代で、MZ世代が生まれる前、または幼児期を過ごした遠い過去の話でした。
しかし「ソンジェ～」の背景は2008年。つまりMZ世代に最も深く影響を与え、最も美しい青春を過ごした時期を背景にしているのです。
ここにドラマ「応答せよシリーズ」でもそうであったように、「ソンジェ～」も2007年に発売されたミルクソングが出てきたり、MP3、生フルーツ専門店、スライドフォンやフォルダフォンなど、当時MZ世代で流行った音楽、食べ物、モノが大量に登場します。
「共感」。この重要なポイントをこのドラマは見逃していないのです。
「ソンジェ背負って走れ」は、MZ世代の傾向を如実に表している代表的なドラマだと思います。そして「市場経済を主導する世代が変わってきている」ことを示唆していると思います。だからこそ、「ソンジェ背負って走れ」色んな意味で面白いドラマだと思います。
